溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
冷たく言い放った蔵人さんの声からは感情が窺えない。
でもその返事はそういうことがあったのだと確定させた。

「ええーっ、だってー」

甘えるような声を出しながら、小雪がこちらを見る。
私と視線をあわせると、にぃーっと唇の端を吊り上げた。
蔵人さんは自分のものだと言わんばかりに。

いたたまれなくなって視線を逸らすと、逃げ出すようにその場を去った。

昨日の夜、蔵人さんが小雪と一緒だったのは理解している。
きっと、ベッドの中まで一緒にしたのだろうと。

けれど、はっきりと確認させられるとプロボクサーからボディーブローを食らったくらい、ショックは大きかった。



仕事帰りに役所に寄った。

街を歩きながらショーウィンドーに映る自分の顔が嫌になる。
改めてみると尾上くんが言ったとおり、目鼻立ちは小雪に似ていた。
しかも同じように長い黒髪をアップにしているから、さらに。
思い切って整形してしまいたいくらいだ。
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