溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「それで事情って?」

こんなプライベートなことを君嶋課長に相談していいのだろうか。
それにこれはまだ、両親にすら話していない。

「どうしても話したくないっていうなら無理には聞かない。
でも久保は困っているように見えるから」

覆うようにくいっと眼鏡をあげた君嶋課長からは表情が窺えない。
どうしてこんなことを聞いてくれるのだろう。
やっぱり、上司としての義務なんだろうか。

「お待たせしました」

迷っている間に君嶋課長が注文したAセットが来た。
トースト、サラダ、ふわとろのスクランブルエッグ。
それにコーヒー。

「とりあえず食べよう」

「……はい」

ナイフとフォークを握ると無言で食べる。
君嶋課長も無言だった。
ナイフフォークのカチャカチャという音だけがふたりの間に響く。
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