溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「い、いえ」

眼鏡の奥からその切れ長な目でじろりと睨まれると、身が小さく縮こまる。

「君と俺が結婚すれば、君は住むところが得られ俺はこのままの生活が続けられる。
ウィンウィンだ」

本当にそうなんだろうか。
なんか違う気もするが、なかなかサインしない私に君嶋課長の態度には少しずつ苛立ちが混じりはじめ、怖くて仕方ない。

「いいから黙ってここにサインしろ」

ペンを押しつけられて、断りきれずに受け取った。
こつこつと君嶋課長の長い指が叩く場所に、震える手でサインする。

「よし、これから忙しくなるぞ。
なにしろ日がないからな」

私がしたサインを確認すると、君嶋課長は婚姻届を折り畳んで内ポケットへしまった。
ぐいっと残りのコーヒーを飲み干すと、くいっと眼鏡を押し上げる。

「絶対に後悔はさせないから」
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