溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
冷え冷えとした声に私はゾクゾクと背筋を寒いものが駆けていったのだけれど、山野さんはうっとりと恍惚の表情を浮かべている。

「わかりました。
でもそれ、せっかく淹れたんでよかったら飲んでください」

またしても語尾にハートマークを付けると、山野さんはその場を去って行った。

その前の君嶋課長の追求と、いまの一連のやり取りですっかり冷えてしまい、給湯室にお茶を淹れに行くと小さく悲鳴が聞こえてくる。

「君嶋課長に叱られたー」

キャーッと悲鳴を漏らしているのは山野さんの声のようだが、……どうしてあれで喜べる?

「羨ましすぎる。
私も君嶋課長に叱られたい」

こっちは誰だか知らない声ですが……叱られたいってなに?
叱られるのが嬉しいなら、代わって差し上げますよ。

「なんだかんだいっても、淹れたコーヒーは絶対飲んでくれるし」
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