溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
ぶちっと切れた携帯に、はぁーっ、大きなため息が落ちる。

父と話をしてまともにできたためしがない。
いつも、あたまごなしに怒鳴るから。
きっと、男性の前で萎縮してなにも言えなくなるのは父のせいだと思う。

両親に祝ってもらえないというのに、私は妙に他人事だった。
結婚したという事実自体、まだなにかに欺されているかのようだ。

それにしても両親が出席しないとなると、どう君嶋課長に説明していいのか困る。
悩んでいるとすぐに携帯が鳴り出した。

『和奏?』

「母さん……」

おどおどと窺うような声は、父に気づかれないように電話をかけているからだろう。

『私から頼んで、お父さんには結婚式に出てもらうようにするから。
あんたからもあやまっときなさいよ』

「わかった……」
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