五十夜美咲事件帳 No.000【男スポ作品】
「う~ん、やはり……いやいやしかし……ん~」
?
上唇に親指を斜にあて、下唇だけつき出したり、かとおもえば小首を傾げながら頭を掻きつつその場をぐるぐると回ってしきりに唸る五十夜警部補。
何か引っかかっているみたいです。
「あの、何か?」
そうわたしが訊ねると、唐突にぴたり、と動きを止め、
「あの、りおさんって採用試験のときぎりぎりでした?」
「え? あぁ、はい。こればっかりは急にどうこうできるものではありませんでしたから……」
採用試験の前日には牛乳とにぼしだけをひたすら食べていたものです。
「ふむ。ちょっとここに立ってもらえます?」
そういって指差されたのは片桐が踏み外したと思われる昇降台の上。
実況検分でしょうか?
「昇ったら戸棚に手を伸ばしてみて下さい」
いわれるがままにしてみます。
戸棚は台に昇るとわたしにとって丁度良い位置にあり、難なく中の物が取り出せそうです。
「……」
警部補はまた深く考え込むそぶりを見せると次の瞬間、思いもよらぬことをいったのです。
「りおさん。ここの店員を呼び出して下さい。ただし対象はカードキーを持っている人間で男女問わず。それから──」
「え? まさか!?」
驚きを隠せないわたしに眠たげな目のまま、
「詳しくは後程話しますが……これは間違いなく──」
けれど確信を持った口調で、
「──殺人です」
そう告げたのでした。
?
上唇に親指を斜にあて、下唇だけつき出したり、かとおもえば小首を傾げながら頭を掻きつつその場をぐるぐると回ってしきりに唸る五十夜警部補。
何か引っかかっているみたいです。
「あの、何か?」
そうわたしが訊ねると、唐突にぴたり、と動きを止め、
「あの、りおさんって採用試験のときぎりぎりでした?」
「え? あぁ、はい。こればっかりは急にどうこうできるものではありませんでしたから……」
採用試験の前日には牛乳とにぼしだけをひたすら食べていたものです。
「ふむ。ちょっとここに立ってもらえます?」
そういって指差されたのは片桐が踏み外したと思われる昇降台の上。
実況検分でしょうか?
「昇ったら戸棚に手を伸ばしてみて下さい」
いわれるがままにしてみます。
戸棚は台に昇るとわたしにとって丁度良い位置にあり、難なく中の物が取り出せそうです。
「……」
警部補はまた深く考え込むそぶりを見せると次の瞬間、思いもよらぬことをいったのです。
「りおさん。ここの店員を呼び出して下さい。ただし対象はカードキーを持っている人間で男女問わず。それから──」
「え? まさか!?」
驚きを隠せないわたしに眠たげな目のまま、
「詳しくは後程話しますが……これは間違いなく──」
けれど確信を持った口調で、
「──殺人です」
そう告げたのでした。