【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。
最寄駅からは、夜景の見える高台がある目的地まで、電車で30分ほど。
土曜日の夕方だけれど、電車は空いていて、私たちはシートに並んで座ることができた。
正面の窓ガラスの向こうには、水性の絵の具でぼかしながら描いたような、紫とオレンジのグラデーションの夕暮れが広がっている。
少し前なら、このくらいの時間にはまだ太陽が空でその存在を主張していたのに、いつの間にか日が暮れるのが早くなっている。
でもこの様子なら、目的地に着く頃には、夜景を見るのに最適な暗さになっているだろう。
「ねぇ、やばくない? あの人、めっちゃかっこいいんだけど」
「声かけてみなよ」
「むりむり!」
静かな車内で、確実に明希ちゃんのことを話しているのであろう女性たちのひそひそ声が聞こえてくる。
当の本人は、そんなことに気づきもせず、私に希紗ちゃんの面白エピソードを語ってくれている。
「パイナップルが言えないの、いけないとはわかってるんだけど超笑っちゃってさ」
そう言って笑う明希ちゃんは、だれもが一度は夢に見るような理想のお兄ちゃんな顔をしていて。
女性たちの熱い視線も、納得だ。
明希ちゃん、本当にかっこいいもんな。