【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。


お互いの距離の近さを、今更ながらに自覚する。


少しでも動いたら、明希ちゃんの顔に自分の顔が触れてしまいそうで。


私たち以外、すべての時間が止まったような気がした。

なにも聞こえない。明希ちゃん以外、見えない。


「……っ」


思わず視線を外し、後ろ手にドアを開けようとした時。


「……髪、綺麗」


ひっそりとした、甘くとろけそうな声が落ちてくる。


そして長い指が私の髪を絡め取った。


どうして、どうしてそんな慈しむような手つきで触れてくれるの──?


「なにか私に言いたいことがあったんじゃ、」


「それはもう、いい」


掠れた声でそう言ったかと思うと、不意に体を倒して肩に額を乗せてきた。


「明希、ちゃん?」


その名を呼んでも、スイッチが切れたかのように動かない。


肩から直に伝わる、明希ちゃんの温もり。


「ごめん、今超ブサイクな顔してるから見ないで」


「え、」


「ヒロ──」


甘く溶けるような声で名前を呼ばれ、ビクッと動揺して体を揺らした拍子に、手をかけていたドアがガラッと開いた。

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