【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。


と、その時。プルルルと突然ポケットの中でスマホが鳴った。

謙虚さのない電子音に、意識が今へと引き戻される。


スマホを取り出し、ディスプレイを確認すると、それは虎太郎さんからだった。

念のために連絡先を教えてほしいと虎太郎さんに声をかけられ電話番号だけ交換したものの、一度も使ったことはなかった。


鳴り止まない着信音はまるで急かしてくるようだ。

なんの用だか見当もつかないまま、いまだ手の中で振動し続けるスマホの通話ボタンを押す。


「はい、もしもし」


『もしもし、高垣?』


「ええ、そうですが」


電話越しに響いてくる虎太郎さんの声が、わずかに慌てているように感じる。

いつもはもっと、どっしりと構えた話し方だった気がする。


そして不自然な間ができて続きの言葉が聞こえてこない。

まるで頭に浮かぶたくさんの言葉の中から適当な言葉を選び出すのに苦戦しているような、そんな間だ。


「虎太郎さん?」


『──明希が』


不意に虎太郎さんの口から不穏な声音で放たれた言葉に、心臓が止まりかけて──。


『明希が車に跳ねられた』


「え?」

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