【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。
『でも、辞めないってことはお母さんのためにって思う気持ちもあるってことでしょう?
どっちを選んでも、私は応援する』
そう言い切れば、きょとんと私を見つめていた彼が、破顔した。
『はは』
予想外の反応に、笑うところなんてあった?と、今度は私がきょとんとしていると。
彼が、笑った拍子に滲んだ涙を拭う。
『初めて言われた、そんなこと。
みんな言うよ、お母さんのために、お母さんが寂しがってるんだから続けろって。
母さんに褒められても、いつもその後ろには父さんがいる気がして、俺のことは全然見てもらえてない気がして、すごくつらかった』
出会った時からいつでも完璧に見えた〝ファン一号くん〟の心の内を知って、なんだかすごく彼が近くに感じた。
ああ、〝ファン一号くん〟も同じ人間なんだ、って。
『でも、そんなふうに言ってもらえるなんてな。
俺のことを考えてくれる人に、初めて出会った。
小学生なのにしっかりしてるね』
『来年から私だって中学生だから』
胸を張って、そう答える。
このランドセルとはもう少しでおさらばなのだ。