【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。
躊躇いがちに訊くと、明希ちゃんが少し目を伏せ、硬い声で呟いた。
「俺が教室に行くとみんなを傷つけるから」
「え?」
思いがけない答えに目を瞠ると、明希ちゃんが取り繕ったような笑みを浮かべた。
「なーんて。
余命幾ばくの病気とかじゃないから安心して?
でも話し相手もいないから、君がここに来てくれて嬉しいんだよね、俺」
「明希ちゃん……」
私にだけ向けられている明希ちゃんの笑顔がやけに大人びて見えて、変な気持ちになる。
ざわざわ。そんな、感情が動こうとしている音。
窓の外から、グラウンドで騒いでいる生徒の声がかすかに漏れ聞こえてくる。
「それなら、毎日来てあげてもいい、けど」
明希ちゃんが、不意を突かれたように目を見開く。
でも、驚いているのは私の方だった。
なにを、言っているんだろう、私は。
「どうせ暇だから」
つい、言い訳を付け足す。
変なことを口走ったのは、ただ、あんなふうに言われて来ないわけにはいかなかった、それだけだ。
ほだされて、同情してしまっただけだ。