【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。
もやもやと消化しきれない気持ちを抱えていると、不意に名前を呼ばれた。
「……ヒロ」
「なに?」
顔をあげれば、ほつれかかった空気を取り繕うように明希ちゃんが微笑んでいた。
「明日、デートしようか」
「え?」
「ヒロの行きたいとこ、行こ」
できるだけ軽いトーンで、明希ちゃんが笑いかける。
明希ちゃんがそう言うのなら。
さっきのことをなかったことにしたいのなら。
「じゃあ、水族館に行きたい」
私は明希ちゃんに合わせた。
前に約束した時、私のせいで行けなくなってしまった水族館には、いつか一緒に行ってみたいとは思っていたからちょうどいい。
そう、ちょうどいいの。
「ん、水族館ね」
反芻して唇を柔く緩める明希ちゃんは、いつもの明希ちゃんで。
心に生まれかけた気持ちは、ぐっと胸の中にしまい込んだ。