【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。






ペンギンを腕に抱えたヒロと、手を繋いで帰路を歩く。


「名前、なににする?」


「明希ちゃんⅡ」


ペンギンを見つめたヒロの、いたって真剣な即答。

不意を突かれた俺は、思わず吹き出した。


「待って、ちょっと今のツボった」


「え? どこに笑う要素があった?」


「いや、ヒロの独特すぎるセンスが爆発してるから」


まじでつぼった。ヒロ、面白すぎる。


……こんなに笑える日が待ってるなんて、今朝は思いもしなかった。


「もう」と軽く頬を膨らませたヒロに、俺は緩く笑みをこぼす。


「ありがとう、ヒロ。
今日すごく幸せな1日だった」


「え?」


「明日の俺を今日より幸せにする、だっけ。
君はいつだって、俺に幸せをくれたんだよな。
俺の毎日は君がいたから輝いてた」


「明希ちゃん……」


ヒロに出会う前、俺は備忘録すらつけていなかったらしい。

多分、失った記憶にも、消えゆく記憶にもまったく頓着していなかったのだろう。

今朝の俺だってそうだった。


でも今、こんなにも明日を生きたいと願ってしまうのは、ヒロがいるから。

どうしたって叶わないという事実は切ないけど、生きたいと思えるのはそれと同じくらい奇跡みたいなことだ。


「昨日も今日も明日も、俺は君に恋をするよ」


確証はないけど、多分絶対そうなんだ。

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