【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。
話し込んでいたら、いつの間にかこんな時間になっていた。
「もう戻らなきゃ」
そうつぶやき、立ち上がって帰る準備に取り掛かろうとする──と、それを遮るように明希ちゃんに両手を掴まれた。
「ヒロ」
「ん?」
明希ちゃんはなにか言おうとして、だけどそれを取り消すように、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。
「あー、いや、なんでもない。
ヒロの充電だけ、させて」
「充電?」
「ん、ヒロが足りなくならないように」
そう言って、ぎゅうっと私の手を握りしめる明希ちゃん。
「……よし、充電完了。
午後の授業も頑張れ」
こちらを見上げ、微笑む明希ちゃん。
……どことなく、なんとなく、名残惜しそうに見える。
明希ちゃんの眼差しも、私の手の甲を親指で撫でるその仕草も。
だけど、こんな時、どう反応したらいいかわからなくて。
「うん、また明日」
いつもどおりのトーンで、いつもどおりの挨拶で。
私は美術準備室を後にした。