俺のトナリ

結局、なんの進展もないまま時は過ぎ……

俺は高校を卒業した。

3年生の後半は自主登校だったけれど、彼女に会いたくて俺は毎日登校した。その甲斐あってか、地元の国立大の教育学部に見事、合格。
'子どもたちにバスケの楽しさを教えたい'それが俺の夢だった。
それに、4月からも彼女に会える。

次の日、結果報告しようと学校へ向かう。
使うのはもちろんいつもの電車。今日も彼女にあえるだろうか。

駅につくと、彼女はなぜか駅の前で壁に凭れて立っている。
誰かと待ち合わせでもしてるのかな?彼氏、とか?
勝手に想像して痛む胸。バカだな。俺も。

ふと、彼女と目が合うと安心したように微笑んで近づいてきた。
「あの。多田高校の宇野真也(まさや)先輩ですよね?」
えっと………彼女に話かけられている?
しかも、何で名前まで知ってるんだ?
「そうだけど。」
うれしいというよりも疑問ばかりが頭を過る。まさか、彼女に話しかけられるなんて思ってなくて、頭の処理が追い付かない。
「先輩。好きです。ずっと、先輩のこと見てました。」
ぽかんとする俺に、彼女は続けた。
「4月からは会えないかもって思って。気持ちだけ伝えたかったんです。聞いてくれてありがとうございました。」
そう言って、去って行こうとする彼女の腕をつかむ。

「待って。」
びっくりしたように、肩を震わせた後彼女がゆっくりこちらを振り返る。
その目はとても不安そうで、今にも泣き出しそうだった。

安心させたくて、そっと彼女を抱き締める。駅前だなんて考えていられなかった。
「俺も好きだよ。俺と付き合ってくれますか?」
「はいっ!!」
涙をためたまま、花が咲いたように笑うんだ。
その笑顔に、俺はまた惚れ直す。

4月からは。俺のトナリ。それが彼女の定位置になる。
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