名前のない星
名前のない星
会って3ヶ月経ったといっても、実際会ったのはほんの数回で、未菜は俺に会ったって横を通り抜けた。
だからこれは人見知りの類いだと俺は無い頭で一生懸命そう思って、いつだって用も無いのに声をかけた。
どんなに迷惑そうな顔をして振り向いても平気だった。
俺が未菜と居られる時間は言葉通りに3ヶ月、しかもそのうちの何回か、本当に始めはそれだけだった。
俺がそんなに容易いこと。
未菜がいつもながら迷惑そうな顔を向けること。
それが平気なこと。
理由なんてそこらじゅうに散らばっていて、どれかひとつなんて俺は馬鹿だからわからなかった。
俺自身こうやってこんな風に人を思うことがあるのだなと不思議だったけれど、
「なんなの?」
と言ったときの未菜の少し赤くなってる鼻先を見つけたりして俺は笑った。
きっとしょうがないくらいしわくちゃにしてしまうほど笑ったのだと思う、それを見て未菜は無視した。
歩き出そうとしたからせっかく立ち止まってくれたのにと、いつまでも引き止めてしまいたかった。
秋という季節はいつだってよくわからないまま過ぎていくと思う。
毎年毎年気づいたら秋がいなくなってしまう、少し寂しい。
仕事が忙しくなる季節が秋の終わりにやって来るのもあってますますそう思った。
「もうお前帰んの?」
未菜は俺のうちに来るようにいつの間にかなって、それでも俺の言うことは時々無視された。
秋の終わりはいつも気が早いクリスマスを連れて来る。
「明日、仕事になった、朝から」
未菜は玄関で靴を履きながらそう言って出て行った。
未菜を見ればわかったことがある。好きなのはアースカラー、お気に入りのタンブラー。手帳につけた赤の他人のネームラベルが貼られたボールペン。あまり、モノを買わない、など。
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