白雪姫 ~another story~
「看護長、この書類お願いします」
「わかったわ、ありがと」
な、何よこれ...
「はあ...」
と受け取った書類を見てため息をつく。
そこには小さな文字で長い文が書かれていた。
「看護長どうされましたか?」
私がため息をつくと後輩の看護師に心配されてしまった。
「あ、大丈夫よ」
と毅然とした態度で返事をする。
そうやって良い女を演じている。
35歳独身。
そろそろ結婚しないと...
「はあ......よしっ」
と私が書類を読み始めた時だった。
「ほんとに!?」
と廊下からつぼみちゃんの声が聞こえてきた。
どうしたのだろう。
見るとそこには高校生ぐらいの男の子と嬉しそうに話すつぼみちゃんの姿があった。
男の子はお辞儀をすると玄関の方へ走っていった。
つぼみちゃんは手を振ると、嬉しそうにこちらへ歩いてきた。
「つぼみちゃんどうしたの?」
と私がたずねると
「あの子、結姫ちゃんの読み聞かせ聞いてたって」
と嬉しそうに言った。
「ほんとに!まあ...10年もたってるからあの子どもたちも高校生くらいになるのか ~」
なんだか歳を感じる。
10年。
長いようで短い。
「嬉しくて、つい大きな声を...」
と恥ずかしそうにつぼみちゃんは言った。
「それに、私のこと結姫ちゃんに似てるって」
と彼女は嬉しそうに笑った。
確かに似てるかも
「よかったわね」
「はい!」
「それじゃあ仕事に戻って。私もこれ読まなきゃだし...」
書類をゆっくりと見る。
「あ...頑張ってください」
そう言うとつぼみちゃんは自分の仕事に戻っていった。
頑張ってくださいって...
まあいい。
よし頑張ろう!
と書類を開いた時だった。
ふとカレンダーが視界に入った。
もうすぐゴールデンウィーク。
そろそろみんなが来てくれる時期だ。
なんだか待ち遠しいなあ