ぷりけつヒーロー 尻は地球を救う 第3話
「で、では、剣の準備をしますのでもう少し待っててください」
「うむ」
凜太郎は照子に言われた通り、早速試しに剣を出してみることした。通信機を口元まで持ってくると、大きく息を吸い込んだ。
「ぷりけつソード!装着!!」
凜太郎の声に反応し、今度は右手が白く輝きだす。光は剣の形へとその姿を次第に変えていく。刃の部分は白銀色に、鍔から柄にかけてはピンク色に輝いている。鍔の部分は尻の形をしている。一風変わった剣だ。
「これが、ぷりけつソード……?」
凜太郎は自身の剣をまじまじと見つめている。コウたちも興味深げにそれを見つめていた。
「ほう。それが貴様の剣か。少し見せてもらっても構わんか?」
「ええ。構いませんよ」
コウに自身の剣を手渡す凜太郎。コウは凜太郎から剣を受け取ると、柄の部分から剣先まで舐め回すように見つめた。
「鍔の部分は少し妙な形をしておるが、なかなか良い剣だ。さすがは晋助といったところか。これであればあの巨人共を斬れるだろう」
そう言うと、コウは凜太郎に剣を返した。
「この剣ってそんなに凄い剣なんですか?俺にはそう見えませんが……」
「世界には数多くの名剣と呼ばれる剣があるが、斬れ味だけでいえばどの名剣よりも勝るといえよう。まぁ我やベルが使う剣ほどではないがな」
「でも、剣ってもっと重いものかと思ってたので、思いのほか軽くて驚きました」
「恐らく貴様に合わせて極限まで軽量化したのだろう。そこまで軽い剣は我も初めてだ。しかし、過信はするな。どのような名剣も使い手がなまくらだと剣もなまくらとなる。努々忘れるな」
「はい!」
凜太郎は力強く答えた。
「では、これより貴様に剣術を教える。まずは貴様がどの程度剣を使えるか把握したい。我を殺す気でかかってこい。手加減は無用だ」
「分かりました!」
「うむ、良い返事だ。怪我をしても案ずるな。そこにいるセアラが治してくれる」
「改めまして、セアラです。私は剣は使えませんが魔法が得意でしてね。さすがに死んでしまった者を生き返すことはできませんが、それ以外の傷や病気であれば瞬時に治せますので安心して稽古に励んでください」
セアラの"魔法"という言葉に敏感に反応する凜太郎。
「ま、魔法って、あの魔法ですか!?」
「えぇ、あの魔法です」
「魔法って実在したんですか!?ゲームとかアニメの世界だけのものだと思ってました」
「厳密に言うと魔法であって魔法ではありません。我々が勝手にそういってるだけです。まぁ詳しくは言えませんが、あなたの使うぷりけつビームの応用だと思ってください」
「俺、いつか魔法も習ってみたいんですが……。ダメですか?」
凜太郎の質問にコウが答える。
「無論それは一向に構わん。向上心があるのは良いことだ。剣と魔法が使えればそれだけ戦術の幅も広がるだろう。が、今は剣術が先だ。魔法を学ぶのはその後でも遅くはなかろう」
「はい!俺、頑張って強くなります!!」
「うむ、では始めるとしよう」
10m程離れ、向かい合う凜太郎とコウ。コウは至って冷静だが、一方、凜太郎は緊張のあまり肩に力が入り過ぎている。剣の構え方もどこかぎこちない。コウの鋭い視線と、その小さな身体からは想像もできないほどの圧倒的な威圧感を感じた凜太郎は額に汗を滲ませていた。汗は頬を伝い、乾いた地面へと静かに落ちた。その瞬間、凜太郎は意を決し、剣を振りかぶって足を踏み出した。
「やぁー!!」
凜太郎のかけ声が広い荒野に響き渡る。二人の距離が徐々に縮まっていく。コウは余裕の表情を浮かべながら微動だにしていない。
そして、凜太郎はコウの頭上めがけて剣を力いっぱい振り下ろした。
「なるほど。この程度か」
コウは右手の人差し指と中指のたった2本だけで凜太郎の剣を受け止めていた。かすり傷ひとつついてない。
「う、動かない……!!なんで!?」
「これが力の差というやつだ。今の貴様では我に傷ひとつつけることも敵うまい。貴様も幾度か死線をくぐり抜けてきたみたいだが、我に言わせればまだまだヒヨっ子よ。だが、初めてにしては太刀筋は悪くない。やはり貴様は良い戦士となる」
凜太郎がどれだけ力を込めても剣は微動だにしなかった。コウは汗ひとつかかず、顔色ひとつ変えてない。
「次は貴様の耐久力も見せてもらおうか」
「えっ!?」
「案ずるな。死なん程度に加減してやろう」
突然、凜太郎の目の前でコウの姿が消えた。バランスを崩す凜太郎。それはまるで瞬間移動でもしたかのように。
次の瞬間、凜太郎の背中に激痛と衝撃が走り、その身体は数km先まで吹き飛ばされた。手放した剣がコウの足元に落ちる。この間、わずか0.2秒。その衝撃の正体はコウの蹴りだった。コウにとってはただの蹴り。それも本来の半分の力も出してなかった。
「随分遠くまで飛んでちゃいましたね」
セアラは他人事のように言った。凜太郎の吹き飛ばされた方を面白そうに笑みを浮かべながら見つめている。
「セアラ、なにをしておる。さっさとあやつを拾ってこい。ついでに傷も癒してやれ」
「えぇ!?わ、私が拾ってくるんですか!?」
「そのための貴様だ。なんだ、我になにか言いたいことでもあるのか?構わん。遠慮せず言うてみよ」
この時、セアラはコウからただならぬ殺気を感じとっていた。明らかに凜太郎の時のそれとは比べものにならないほどの殺気だ。セアラの杖を持つ右手が小刻みに震えだす。
「い、いえ……。そのようなことなど決してございません。今すぐ拾ってまいります」
「そうか、ならばよい。では、頼んだぞ。セアラ」
「はっ!」
セアラが杖に力を込めるとその先端が黒く輝きだし、黒い渦が現れた。セアラはその中へと消えていった。
「うむ……。耐久力も鍛えてやるとしよう。これは鍛え甲斐がありそうだ」
コウは足元に転がった凜太郎の剣を見つめながら、面頬の奥で薄っすら笑みを浮かべた。
「うむ」
凜太郎は照子に言われた通り、早速試しに剣を出してみることした。通信機を口元まで持ってくると、大きく息を吸い込んだ。
「ぷりけつソード!装着!!」
凜太郎の声に反応し、今度は右手が白く輝きだす。光は剣の形へとその姿を次第に変えていく。刃の部分は白銀色に、鍔から柄にかけてはピンク色に輝いている。鍔の部分は尻の形をしている。一風変わった剣だ。
「これが、ぷりけつソード……?」
凜太郎は自身の剣をまじまじと見つめている。コウたちも興味深げにそれを見つめていた。
「ほう。それが貴様の剣か。少し見せてもらっても構わんか?」
「ええ。構いませんよ」
コウに自身の剣を手渡す凜太郎。コウは凜太郎から剣を受け取ると、柄の部分から剣先まで舐め回すように見つめた。
「鍔の部分は少し妙な形をしておるが、なかなか良い剣だ。さすがは晋助といったところか。これであればあの巨人共を斬れるだろう」
そう言うと、コウは凜太郎に剣を返した。
「この剣ってそんなに凄い剣なんですか?俺にはそう見えませんが……」
「世界には数多くの名剣と呼ばれる剣があるが、斬れ味だけでいえばどの名剣よりも勝るといえよう。まぁ我やベルが使う剣ほどではないがな」
「でも、剣ってもっと重いものかと思ってたので、思いのほか軽くて驚きました」
「恐らく貴様に合わせて極限まで軽量化したのだろう。そこまで軽い剣は我も初めてだ。しかし、過信はするな。どのような名剣も使い手がなまくらだと剣もなまくらとなる。努々忘れるな」
「はい!」
凜太郎は力強く答えた。
「では、これより貴様に剣術を教える。まずは貴様がどの程度剣を使えるか把握したい。我を殺す気でかかってこい。手加減は無用だ」
「分かりました!」
「うむ、良い返事だ。怪我をしても案ずるな。そこにいるセアラが治してくれる」
「改めまして、セアラです。私は剣は使えませんが魔法が得意でしてね。さすがに死んでしまった者を生き返すことはできませんが、それ以外の傷や病気であれば瞬時に治せますので安心して稽古に励んでください」
セアラの"魔法"という言葉に敏感に反応する凜太郎。
「ま、魔法って、あの魔法ですか!?」
「えぇ、あの魔法です」
「魔法って実在したんですか!?ゲームとかアニメの世界だけのものだと思ってました」
「厳密に言うと魔法であって魔法ではありません。我々が勝手にそういってるだけです。まぁ詳しくは言えませんが、あなたの使うぷりけつビームの応用だと思ってください」
「俺、いつか魔法も習ってみたいんですが……。ダメですか?」
凜太郎の質問にコウが答える。
「無論それは一向に構わん。向上心があるのは良いことだ。剣と魔法が使えればそれだけ戦術の幅も広がるだろう。が、今は剣術が先だ。魔法を学ぶのはその後でも遅くはなかろう」
「はい!俺、頑張って強くなります!!」
「うむ、では始めるとしよう」
10m程離れ、向かい合う凜太郎とコウ。コウは至って冷静だが、一方、凜太郎は緊張のあまり肩に力が入り過ぎている。剣の構え方もどこかぎこちない。コウの鋭い視線と、その小さな身体からは想像もできないほどの圧倒的な威圧感を感じた凜太郎は額に汗を滲ませていた。汗は頬を伝い、乾いた地面へと静かに落ちた。その瞬間、凜太郎は意を決し、剣を振りかぶって足を踏み出した。
「やぁー!!」
凜太郎のかけ声が広い荒野に響き渡る。二人の距離が徐々に縮まっていく。コウは余裕の表情を浮かべながら微動だにしていない。
そして、凜太郎はコウの頭上めがけて剣を力いっぱい振り下ろした。
「なるほど。この程度か」
コウは右手の人差し指と中指のたった2本だけで凜太郎の剣を受け止めていた。かすり傷ひとつついてない。
「う、動かない……!!なんで!?」
「これが力の差というやつだ。今の貴様では我に傷ひとつつけることも敵うまい。貴様も幾度か死線をくぐり抜けてきたみたいだが、我に言わせればまだまだヒヨっ子よ。だが、初めてにしては太刀筋は悪くない。やはり貴様は良い戦士となる」
凜太郎がどれだけ力を込めても剣は微動だにしなかった。コウは汗ひとつかかず、顔色ひとつ変えてない。
「次は貴様の耐久力も見せてもらおうか」
「えっ!?」
「案ずるな。死なん程度に加減してやろう」
突然、凜太郎の目の前でコウの姿が消えた。バランスを崩す凜太郎。それはまるで瞬間移動でもしたかのように。
次の瞬間、凜太郎の背中に激痛と衝撃が走り、その身体は数km先まで吹き飛ばされた。手放した剣がコウの足元に落ちる。この間、わずか0.2秒。その衝撃の正体はコウの蹴りだった。コウにとってはただの蹴り。それも本来の半分の力も出してなかった。
「随分遠くまで飛んでちゃいましたね」
セアラは他人事のように言った。凜太郎の吹き飛ばされた方を面白そうに笑みを浮かべながら見つめている。
「セアラ、なにをしておる。さっさとあやつを拾ってこい。ついでに傷も癒してやれ」
「えぇ!?わ、私が拾ってくるんですか!?」
「そのための貴様だ。なんだ、我になにか言いたいことでもあるのか?構わん。遠慮せず言うてみよ」
この時、セアラはコウからただならぬ殺気を感じとっていた。明らかに凜太郎の時のそれとは比べものにならないほどの殺気だ。セアラの杖を持つ右手が小刻みに震えだす。
「い、いえ……。そのようなことなど決してございません。今すぐ拾ってまいります」
「そうか、ならばよい。では、頼んだぞ。セアラ」
「はっ!」
セアラが杖に力を込めるとその先端が黒く輝きだし、黒い渦が現れた。セアラはその中へと消えていった。
「うむ……。耐久力も鍛えてやるとしよう。これは鍛え甲斐がありそうだ」
コウは足元に転がった凜太郎の剣を見つめながら、面頬の奥で薄っすら笑みを浮かべた。