ぷりけつヒーロー 尻は地球を救う 第3話
「凜太郎、忘れ物を届けにきてやったぞ」
凜太郎が声のした方を振り向くと、そこにはコウとセアラの姿があった。
「コウさん!セアラさん!」
驚きの声を上げ、二人に駆け寄る凜太郎。
「いやぁ~、間に合って良かったです」
「お二人がなんでここに!?」
「晋助からの依頼だ。"凜太郎に変身装置を届け、一般人を助けろ"とな。まったく、つまらん仕事だ。あやつからの依頼でなければ断っているところだ」
コウは不満げな表情を浮かべ、ため息まじりに答えた。辺りを見渡す凜太郎。
「そういえば、ベルさんは?」
「あやつには少しやってもらいたいことがあってな。今は別行動中だ」
「コウ様、そろそろご準備された方がよろしいかと……」
「うむ、そうだな。では、セアラ。貴様は予定通りここに残り、結界を張れ。我と凜太郎は怪人の元へ行く」
「はっ!かしこまりました。お気をつけて」
「凜太郎は気を付けた方がいいかもしれんが、我があのような雑魚相手に気を付けることもあるまい」
コウはそう言うと、凜太郎の手を強く握り締めた。
「行くぞ」
「行くって、どういう――」
凜太郎の言葉を最後まで聞かずに、コウは凜太郎の手を握り締めたまま、脚力だけで怪人のいるグラウンドへ向けてその場で踏み込み、飛んだ。突然の行動に凜太郎は叫ぶ間もなかった。コウが踏み込んだ場所には深さ5cm以上にも及ぶ足跡がくっきりと残っていた。
「さて、私もお仕事しますか」
セアラはコウと凜太郎が向かったのをその目で確認すると、自身に気合を入れるかのように言った。
怪人の前までやってきたコウと凜太郎。怪人は倒れたまま微動だにしない。巨大化は途中で止まっている。
「死んじゃったんですかね?」
「いや、恐らく気絶しておるだけであろう」
「今のうちに倒しちゃうのは、やっぱりまずいです……よね?」
コウは凜太郎の顔を殺気のこもった眼で睨みつけた。
「そんなつまらん真似をしてみろ。我が貴様を殺すぞ……!それでもいいなら、やるがいい」
凜太郎の背筋に冷たいものが走った。
「死にたくないので遠慮しときます……」
その時、ようやく気が付いた怪人がその巨体をゆっくり起こし、立ち上がる。
「あいたたた……。もう!誰!?私を蹴り飛ばして邪魔したのは!」
「我だ」
コウと凜太郎の存在に気づく怪人。見下ろし、凜太郎に視線を向ける。ミニスカートから伸びる太めの脚の間からパンティがチラりと見えている。ピンク色のかわいいパンティだ。
「巨人、どこを見ておる。こっちだ、愚か者め」
怪人はコウに視線を移した。その姿を見た怪人は笑い混じりに答える。
「君みたいなおこちゃまが!?このジョーカー様を蹴り飛ばしたですって!?寝言なら寝てから言いなさいよ」
その瞬間、コウの姿が忽然と消えた。そして、次の瞬間には3m近くはあろうかという漆黒の大鎌の刃を怪人の喉元に当てていた。怪人の動きが止まる。凜太郎は驚きの表情を浮かべていた。
――コウさん、どこからあんな鎌出したんだ……!あんなの持ってなかったはずなのに
凜太郎の脳裏に様々が憶測が飛び交う。一方、怪人は依然として身動きが取れずにいた。息を呑み、額から流れた汗が頬を伝う。コウは冷たい視線を怪人に向けながら静かに口を開いた。
「勘違いするな、巨人の女。貴様が今生きているのは先程、我が加減したからだ。貴様を殺すことなど容易いことだが、それでは凜太郎のためにならん。あくまでも貴様の相手はそこにいる凜太郎だ。我ではない。無論、貴様が我と戦いたいというのであれば話は別だがな」
ジョーカーはコウの大鎌を見て、ある噂を思い出した。声を震わせながら答える。
「銀髪に黒い面頬、それにその大鎌……。あなたが噂の死神さんね。あなたが凜太郎くんと仲が良いだなんて超意外。これはちょっと計算外だったかも」
「仲が良いというわけではない。こっちも仕事でな。さて、無駄口はここまでにして貴様の答えを聞かせてもらおうか。我と戦うか、素直に凜太郎と戦うか」
この時、ジョーカーは本能的に感じ取り、自身の中ですでに答えは出ていた。
――この男と戦ってはいけない
そして、それはジョーカーの口から告げられた。
「今あなたと戦うのはやめとく。勝ち目なさそうだし。私だって自分の命は惜しいもん」
その言葉を聞いたコウは霧のように大鎌を消し、凜太郎のそばまで戻った。
「賢明な判断だな。では、我は少し離れたところから高みの見物をさせてもらおう。凜太郎、これも稽古の一環だと思い、励むがよい」
「わ、分かりました!頑張ります!!」
「うむ、期待しておるぞ」
そう言い残すと、コウはまた忽然と姿を消した。コウがいなくなったのを確認したジョーカーは安堵の溜め息を漏らした。
「あぁ、マジでビビッた~!あんなバケモンがいるなんて聞いてないわよ!!帰艦したら文句言ってやるんだから!」
「あ、あの~……」
申し訳なさげに凜太郎がジョーカーに声をかけた。ジョーカーは凜太郎に視線を向ける。
「そっか、そういえばまだあんたがいたんだっけ。でも、あんたになら勝てるかもね~」
再度力を集中し、巨大化しはじめるジョーカー。そこへコウが現れる。突然の出現に驚く凜太郎。
「びっくりするじゃないですか!急に現れないでください!!」
「驚かせるつもりはなかったのだが、貴様にこれを渡すのを忘れててな」
コウは凜太郎に晋助から預かった変身装置を渡した。
「でも、今変身するとみんなに見られる可能性が……。それに、こんなところで怪人と戦ったりしたら学校や周りの住民や建物にも被害が及びます」
「案ずるな。そのためにセアラを連れてきたのだ。奴は今校内で強力な結界を張っておる。その間はどのようなことがあっても校舎内に危害が及ぶことはない。無論、結界内に入ることや結界外に出ることは不可能だ。我が保証する。それに、向こうからこっちの様子は見えん。同じく、こっちからも向こうの様子は見えんがな。周囲の住民も晋助たちの手配ですでに避難済だ。壊れた建物に関しては我が直してやろう」
凜太郎が校舎の方を目視で確認すると一見特に変わったところはないように見えるが、よく目を凝らして見ると幾何学模様の白い膜のようなものが校舎全体をドーム状に囲むような形で覆っていた。
「たしかに、それなら安心ですね」
「思う存分戦うがいい。だが凜太郎よ、我を失望させるような真似だけはするな。よいな?」
「はい!」
「うむ、相変わらず返事だけは一人前だな」
凜太郎はコウに向かって苦笑いを浮かべた。
「では、健闘を祈る」
そう言い残し、コウは姿を消した。自身の頬を手で叩き、気合を入れる凜太郎。
「みんなのためにも、ここは負けられない!いくぞ!!変身だ!」
凜太郎は左腕に変身装置を装着し、変身の体勢に入る。
「ぷりけつぷりけつぷ~りぷり!巨大化!!」
凜太郎の身体全体を白く輝く光が包み込み、ジョーカーと共に巨大化していく。
ジョーカーは最終的に体長34m近くまで巨大化し、凜太郎もそれに合わせて巨大化した。そして、両者は対峙した。
突然、凜太郎のコスチュームを見たジョーカーがその場で吹き出し、お腹を押さえながら笑い出した。
「話には聞いてたけど、あんたのその恰好マジウケる。笑かすのやめてよ、戦えないじゃん。なんで頭に尻乗っかってんの?ねぇ、なんで?超お腹痛いんだけど」
「なんで頭に尻があるかなんて知らないよ!こっちが訊きたいよ!!だから嫌なんだよ、変身するの……」
深呼吸をし、なんとか落ち着きを取り戻すジョーカー。
「危ない危ない。もう少しで凜太郎くんの笑かし大作戦にハマるところだった」
「作戦じゃないから!!仕様だから、これ!」
語気を強め、否定する凜太郎。
落ち着いた二人は改めて戦闘態勢に入った。場の緊張感が一気に高まっていく。
「君の必殺技って、たしか"ぷりけつビーム"だっけ?いいよ、撃っても。撃てるものなら、ね」
余裕の笑みを浮かべるジョーカー。凜太郎は考えた。
――いくらセアラさんの結界があるとはいえ、さすがにこんなところでぷりけつビームは撃てない……!となれば、選択肢はただひとつ。"あれ"しかない!!
凜太郎が声のした方を振り向くと、そこにはコウとセアラの姿があった。
「コウさん!セアラさん!」
驚きの声を上げ、二人に駆け寄る凜太郎。
「いやぁ~、間に合って良かったです」
「お二人がなんでここに!?」
「晋助からの依頼だ。"凜太郎に変身装置を届け、一般人を助けろ"とな。まったく、つまらん仕事だ。あやつからの依頼でなければ断っているところだ」
コウは不満げな表情を浮かべ、ため息まじりに答えた。辺りを見渡す凜太郎。
「そういえば、ベルさんは?」
「あやつには少しやってもらいたいことがあってな。今は別行動中だ」
「コウ様、そろそろご準備された方がよろしいかと……」
「うむ、そうだな。では、セアラ。貴様は予定通りここに残り、結界を張れ。我と凜太郎は怪人の元へ行く」
「はっ!かしこまりました。お気をつけて」
「凜太郎は気を付けた方がいいかもしれんが、我があのような雑魚相手に気を付けることもあるまい」
コウはそう言うと、凜太郎の手を強く握り締めた。
「行くぞ」
「行くって、どういう――」
凜太郎の言葉を最後まで聞かずに、コウは凜太郎の手を握り締めたまま、脚力だけで怪人のいるグラウンドへ向けてその場で踏み込み、飛んだ。突然の行動に凜太郎は叫ぶ間もなかった。コウが踏み込んだ場所には深さ5cm以上にも及ぶ足跡がくっきりと残っていた。
「さて、私もお仕事しますか」
セアラはコウと凜太郎が向かったのをその目で確認すると、自身に気合を入れるかのように言った。
怪人の前までやってきたコウと凜太郎。怪人は倒れたまま微動だにしない。巨大化は途中で止まっている。
「死んじゃったんですかね?」
「いや、恐らく気絶しておるだけであろう」
「今のうちに倒しちゃうのは、やっぱりまずいです……よね?」
コウは凜太郎の顔を殺気のこもった眼で睨みつけた。
「そんなつまらん真似をしてみろ。我が貴様を殺すぞ……!それでもいいなら、やるがいい」
凜太郎の背筋に冷たいものが走った。
「死にたくないので遠慮しときます……」
その時、ようやく気が付いた怪人がその巨体をゆっくり起こし、立ち上がる。
「あいたたた……。もう!誰!?私を蹴り飛ばして邪魔したのは!」
「我だ」
コウと凜太郎の存在に気づく怪人。見下ろし、凜太郎に視線を向ける。ミニスカートから伸びる太めの脚の間からパンティがチラりと見えている。ピンク色のかわいいパンティだ。
「巨人、どこを見ておる。こっちだ、愚か者め」
怪人はコウに視線を移した。その姿を見た怪人は笑い混じりに答える。
「君みたいなおこちゃまが!?このジョーカー様を蹴り飛ばしたですって!?寝言なら寝てから言いなさいよ」
その瞬間、コウの姿が忽然と消えた。そして、次の瞬間には3m近くはあろうかという漆黒の大鎌の刃を怪人の喉元に当てていた。怪人の動きが止まる。凜太郎は驚きの表情を浮かべていた。
――コウさん、どこからあんな鎌出したんだ……!あんなの持ってなかったはずなのに
凜太郎の脳裏に様々が憶測が飛び交う。一方、怪人は依然として身動きが取れずにいた。息を呑み、額から流れた汗が頬を伝う。コウは冷たい視線を怪人に向けながら静かに口を開いた。
「勘違いするな、巨人の女。貴様が今生きているのは先程、我が加減したからだ。貴様を殺すことなど容易いことだが、それでは凜太郎のためにならん。あくまでも貴様の相手はそこにいる凜太郎だ。我ではない。無論、貴様が我と戦いたいというのであれば話は別だがな」
ジョーカーはコウの大鎌を見て、ある噂を思い出した。声を震わせながら答える。
「銀髪に黒い面頬、それにその大鎌……。あなたが噂の死神さんね。あなたが凜太郎くんと仲が良いだなんて超意外。これはちょっと計算外だったかも」
「仲が良いというわけではない。こっちも仕事でな。さて、無駄口はここまでにして貴様の答えを聞かせてもらおうか。我と戦うか、素直に凜太郎と戦うか」
この時、ジョーカーは本能的に感じ取り、自身の中ですでに答えは出ていた。
――この男と戦ってはいけない
そして、それはジョーカーの口から告げられた。
「今あなたと戦うのはやめとく。勝ち目なさそうだし。私だって自分の命は惜しいもん」
その言葉を聞いたコウは霧のように大鎌を消し、凜太郎のそばまで戻った。
「賢明な判断だな。では、我は少し離れたところから高みの見物をさせてもらおう。凜太郎、これも稽古の一環だと思い、励むがよい」
「わ、分かりました!頑張ります!!」
「うむ、期待しておるぞ」
そう言い残すと、コウはまた忽然と姿を消した。コウがいなくなったのを確認したジョーカーは安堵の溜め息を漏らした。
「あぁ、マジでビビッた~!あんなバケモンがいるなんて聞いてないわよ!!帰艦したら文句言ってやるんだから!」
「あ、あの~……」
申し訳なさげに凜太郎がジョーカーに声をかけた。ジョーカーは凜太郎に視線を向ける。
「そっか、そういえばまだあんたがいたんだっけ。でも、あんたになら勝てるかもね~」
再度力を集中し、巨大化しはじめるジョーカー。そこへコウが現れる。突然の出現に驚く凜太郎。
「びっくりするじゃないですか!急に現れないでください!!」
「驚かせるつもりはなかったのだが、貴様にこれを渡すのを忘れててな」
コウは凜太郎に晋助から預かった変身装置を渡した。
「でも、今変身するとみんなに見られる可能性が……。それに、こんなところで怪人と戦ったりしたら学校や周りの住民や建物にも被害が及びます」
「案ずるな。そのためにセアラを連れてきたのだ。奴は今校内で強力な結界を張っておる。その間はどのようなことがあっても校舎内に危害が及ぶことはない。無論、結界内に入ることや結界外に出ることは不可能だ。我が保証する。それに、向こうからこっちの様子は見えん。同じく、こっちからも向こうの様子は見えんがな。周囲の住民も晋助たちの手配ですでに避難済だ。壊れた建物に関しては我が直してやろう」
凜太郎が校舎の方を目視で確認すると一見特に変わったところはないように見えるが、よく目を凝らして見ると幾何学模様の白い膜のようなものが校舎全体をドーム状に囲むような形で覆っていた。
「たしかに、それなら安心ですね」
「思う存分戦うがいい。だが凜太郎よ、我を失望させるような真似だけはするな。よいな?」
「はい!」
「うむ、相変わらず返事だけは一人前だな」
凜太郎はコウに向かって苦笑いを浮かべた。
「では、健闘を祈る」
そう言い残し、コウは姿を消した。自身の頬を手で叩き、気合を入れる凜太郎。
「みんなのためにも、ここは負けられない!いくぞ!!変身だ!」
凜太郎は左腕に変身装置を装着し、変身の体勢に入る。
「ぷりけつぷりけつぷ~りぷり!巨大化!!」
凜太郎の身体全体を白く輝く光が包み込み、ジョーカーと共に巨大化していく。
ジョーカーは最終的に体長34m近くまで巨大化し、凜太郎もそれに合わせて巨大化した。そして、両者は対峙した。
突然、凜太郎のコスチュームを見たジョーカーがその場で吹き出し、お腹を押さえながら笑い出した。
「話には聞いてたけど、あんたのその恰好マジウケる。笑かすのやめてよ、戦えないじゃん。なんで頭に尻乗っかってんの?ねぇ、なんで?超お腹痛いんだけど」
「なんで頭に尻があるかなんて知らないよ!こっちが訊きたいよ!!だから嫌なんだよ、変身するの……」
深呼吸をし、なんとか落ち着きを取り戻すジョーカー。
「危ない危ない。もう少しで凜太郎くんの笑かし大作戦にハマるところだった」
「作戦じゃないから!!仕様だから、これ!」
語気を強め、否定する凜太郎。
落ち着いた二人は改めて戦闘態勢に入った。場の緊張感が一気に高まっていく。
「君の必殺技って、たしか"ぷりけつビーム"だっけ?いいよ、撃っても。撃てるものなら、ね」
余裕の笑みを浮かべるジョーカー。凜太郎は考えた。
――いくらセアラさんの結界があるとはいえ、さすがにこんなところでぷりけつビームは撃てない……!となれば、選択肢はただひとつ。"あれ"しかない!!