マリッジコンプレックス
ブツブツ文句を言う声なんか耳に入らない。


なんでこのタイミング?間が悪すぎるだろ!


チラリとスマホの時間を確認すると、もうすでに約束の時間を過ぎてる。


もしかしたらもう店内にいて、私のことを探してるかもしれない。




「いーから、そこどいてよ
私、待ち合わせしてんの?そのくらい見ればわかるでしょ?

あんたとはもう会わないって決めたんだから、邪魔しないでよね!

私は、結婚したいの
今絶賛婚活中なの!」




そこまで言ってハッとした。


混み合う店内に響き渡っていたのか、一瞬周りの空気が変な感じになった。


さっきまでスマホでゲームをしていた隣の若い男の子がチラチラこっちを見てる。




あーやっちゃった……もう、最悪!




恥ずかしくて顔があげられないでいたその視界の端に、一人の男性がそそくさと店内から出るのが見えた。




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