マリッジコンプレックス
「ま、俺が言うなって感じだけどな?」
唇の端をあげてニヤッと笑う塁が、目線を合わすように顔を近づけてくる。
それから、私の頭に手を置いてクシャクシャっと無造作に髪をかき回した。
ずるい……
いっつもそうやって、私の心に入り込んでくるくせに、私が追いかけるとスっといなくなるんだ。
諦めたくても諦めさせてもくれないとか、ほんとどこまでひどいやつなんだし!
なにも言えなくなってグッと下唇を噛み締めていると、これでおしまいとでもいうようにポンッと最後に頭を軽く叩いて、体を起こした。
少しだけ、名残惜しげに顔を上げてしまうと、塁は少し考えるような素振りをしてから、いきなり私の手を掴んで歩き始める。
「ちょっと!なに?どこいくつもり?」
思わず引いた手を塁の手がぐっと引き寄せる。
それからふふふんと不敵に笑いながらゆっくり私を振り返った。
「さっきの、見合いダメにしちゃったおわび」