マリッジコンプレックス
あぁ……まただ。
私が塁にかたくなに会わなかった理由。
友達としてでも一緒にいられるならいい。
そう、何度も思った。
塁を友達のポジションに置いておいて、婚活したっていいんだから。
結婚は別の相手としたとしても、友達ならずっと別れることもないし、会うことだって不可能じゃない。
でも、こうして会ってみてわかる。
からかうような仕草も、バカにするような口ぶりも、簡単に無防備に触れてくる手も、やっぱり私を塁でいっぱいにしてしまうのだ。
他の人の入る隙間がないくらい。
それこそ溢れてしまうくらい。
悔しいけど好きな気持ちにまた気付かされてしまう。
そしてそれは呪縛のように私に絡みついて、ズルズルとその心地いい場所から抜け出すことを阻んでいく。
振られたきっかけでもなければ決心がつかなかった会わないって選択肢も、簡単に覆ってしまうほどに……
そして今、懲りもせずにこの手を振りほどくことができないでいる。
なんにも考えてなさそうな塁に手を引かれて歩きながら、私はまた自分の婚期が遅れることを自覚してガックリ肩を落とした。