マリッジコンプレックス
そんなやりとりをしたあと、課長はじゃあな？と、上の階に行ってしまった。


ふと、違和感を覚えて秋絵さんを見る。


そういえば、いつもはノリのいい秋絵さんが、今の会話に全く参加してなかったことに気づいた。



「秋絵…さん？どうかしましたか？」



さっきまでとは違って強ばった顔の秋絵さんが、今まで息を止めていたかのように、フゥーっと細く長く息を吐き出した。



「ごめん、なんでもないの」



そういうと、すぐにいつもの秋絵さんの顔に戻ってスタスタと階段を上がっていく。



「お昼の時間、短くなっちゃうから早く行こ？希美の話はまた今度ゆっくり聞くからさ」



まるで何も聞かれたくないような態度の秋絵さんに、私は気づいてしまった。


だけど、秋絵さんが言わないのならそのままにしておくのがいいんだろう。


私と違って秋絵さんはもう次の恋に向かって歩き出してるんだから。


過去のことはもう忘れたいに決まってる。
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