初恋
「いくよ!良く見ててね!」
花実のいつもより高い声と同時に、優の後ろから大量の水しぶきが降ってきた。
「わっ」
思わず目を閉じ、頭を肩にすくめる。
「ほら!虹!」
恐る恐るゆっくりと目をあける。
そこには見たことのない景色が広がっていた。
水しぶきが太陽の光に照らされ、キラキラ光る。
そこには虹色の孤が描かれていた。
「に、虹だ・・・・」
「ね、夢じゃないでしょ」
目の前には優にとって世界で一番綺麗な虹と、後ろには笑顔満開の花実。
きっとこれは幸せなんだ。
小学生ながらにそう思っていた。
その日はお互いびしょ濡れになるまで虹を作って遊んだ。
「優、今日はたくさん笑った」
帰り道、花実が言う。
「優は、もっと笑ったほうが良いよ」
濡れた靴が公園から家までの足跡をつける。
ただの夕暮れの空でさえも、虹に見えた。