初恋
「私とここで毎日本の貸し借りできるくらい、優には友達がいないよ」
一瞬、むっとした表情を見せるが、それはすぐに笑顔に変えた。
「じゃあ、花実もだね」
優は花実と出会ってよく笑うようになった。
正確には、“花実といると”よく笑うようになった。
それは優以外の誰もが気づいていた。
「ねえ、中学って楽しい?」
今日も本は読まずに開くだけで、2人の口はずっと動いていた。
「全然、楽しくないよ」
「勉強難しいから?」
「ううん。みんな中途半端に大人になってて、つまらない」
花実の言っている意味が分からないのが、自分が小学生だからではないだろうかと少しだけ悔しかった。
「みんな、虹を作る楽しさも忘れたみたいに、背伸びした話ばかりしてる」
きっと花実はつまらない顔をしたようだが、優にはそれが悲しい顔に見えていた。
「ネバーランドに行こう」