初恋
「ネバーランドって、ピーター・パンの?」
「そうです。今日のおすすめの本は、ピーター・パンです」
鞄からいつもより少しだけ分厚い本が出てくる。
優はそれを花実の胸に押し付けた。
「やっぱり優はファンタジーが好きだね」
一人称が「僕」から「俺」に変わった優でも、まだ空想世界が好きな子どもだった。
花実は羨ましく、微笑ましく、優となら子どものままでいれる気がした。
ずっと一緒に虹を作っていられる気がした。
「私、原作読むの初めて。ありがとう」
だけど、虹を作る夢は少しずつ見なくなっていった。