初恋
そんな優の気も知らず、るんるんで学生鞄から一冊の本を取り出した。
「これ!」
花実が出した空色の本には「虹の作り方」と書いてあった。
「花実にぴったりの本じゃん」
「そうなの!あのね、ここを読んで欲しい!」
その箇所にはわざわざ付箋が貼ってあり、本を開く優に、花実は興奮気味に覗き込んできた。
距離が近く、髪に息がかかりそうだ。
優は思わず息を止めた。
そこには花実が夢みるような虹の作り方が書いてあり、主人公はスキップで駆けながら気まぐれに虹を作って回っている描写が描かれていた。
「花実のこと書いてるみたいだね」
そういうと喜ぶかなって思って出た言葉。
大人になるってこういうことなんじゃないかと、はっとしてしまった。