初恋
そんな優の泣き言にも気づかず、花実は優の手の中の本を一人読み進めていく。
「あたしが、本の中にいるみたい・・・」
優は、それは嬉しそうに目を光らせる花実の横顔から目が離せなかった。
「これ、優に貸してあげる!」
切り替えるポイントを作り、本から優へと目線を変えてそう言った。
「ありが・・・」
言い終わる前に、花実の声がかぶさった。
「貸し出し期間が1週間だから、それまでには返してね。あ、でも優は読むの早いから全然大丈夫か」
瞬間、優の何もかもが硬直した。
「え・・・・?」
固まった優には、さすがの花実も気がついた。
「どうかした?」
何がいけないのか分からないが、不安が伝染した顔をする。
「図書館・・・行ったんだ」