初恋
「えっと、学校のだよ?あの市立図書館はまだ・・・・」
まさか優がそんなことを言うとは思わなかったのだ。
本以外あまり興味を示さない優だったため、楽天的な花実も今回ばかりは焦った。
花実が思い出の図書館じゃないと嫌だから、それ以外は行きたくないから、優もそれに付き合って土手で本の貸し借りをしていたのだ。
それなのに、花実は何も言わずに学校の図書館に行った。
だけどまさか、それで優が機嫌を損ねるとは思わなかった。
「優、ごめんね?」
眉を下げて、花実の大きい瞳が優の悲しい顔を覗き込んだ。
「別に」
優はふいっと顔を背け、まだ声変わりしない1番低い声で言った。
「花実と、市立図書館行きたい」