初恋
図書館で、借りるのは自分が読む本ではなかった。
初めて一緒に行ったあの日、花実が「優にはこの本かな」と渡してきたため、優も自然と花実に合う本を選んで渡した。
久しく行っていないと、顔ぶれも変わっていた。
高学年になったからか、同じ小学校のやつもたまに見かけた。
図書館へは行くようになったけど、土手で並ぶのは変わらなかった。
それはきっと、図書館では私語があまりできないから。
お互いが言わずとも、そう感じていた。
図書館は2人の雨宿りだねって花実は言った。
秋も冬に変わり、お母さんからは新しいマフラーを渡された。
「マフラー去年と違うね」
お互いが選んだ本を抱え、図書館を出る。
冷たい風から逃げるよう、口元を新しいマフラーに埋めた優に、花実は言う。
「うん。もう、ボロボロになってたから」
「好きだったんだけどな、優の、空色のマフラー」