初恋
恋色
季節は冬から春に変わった。
桜が満開になるにはもう少し先だと知っていた。
それでもきらきらと眩しい太陽に目を顰めながら、優は初めての制服に袖を通した。
成長を見越して少し大きめの学ランを買った。
「似合わない。ぶかぶかの中学一年生」
いつもの土手では、花実が待っていた。
約束していない朝の時間。
この時間に会うのは、初めてだった。
「はじめまして、中学生の佐倉優くん」
花実が企んだようにお辞儀をする。
「……はじめまして」
「ようやく、同じ学校だね」
にっこり笑う花実に、優も少しばかり微笑んだ。
花実が言いたいことは分かっていた。
約束のない朝に待っていた理由も、同じ気持ちだってことも、分かっていた。