初恋
優が中学生になるまで時間がかかった。
同じ学校になるまで時間がかかった。
花実に追いつくまで、とても時間がかかった。
「お待たせしました」
そう言って、履きなれないローファーを蹴って、隣に並んだ。
「今度こそ友達できるといいね」
「馬鹿にしてんの?」
花実の意地悪なセリフにも慣れたものだ。
いちいちムキになる小学生とは違うのだ。
「友達できなくて図書館とかで一人でご飯食べてそう」
拗ねて欲しくて言ってみたが、中学生になった優にはそうもいかなかった。
「その時は花実が一緒に食べてくれるんでしょ?」
全く想像できていなかった返しに、花実は目を丸くした。
「優、中学生になったらそんなことも言えるようになっちゃうの?」
「中学生ですから」
言って、いつもとは違う道へ2人並んで歩く。
まだ、花実の方が少しだけ背は高かった。