初恋



「そう」



あえて素っ気ない返事をして、目をそらす。



その続きを聞くのが怖かった。



花実がなんて答えたのか、一生懸命気にしない振りをしてみせた。



「また雨かあ」



その日は大好きな本はやめて、お互いテスト勉強に励もうと気合を入れた日だった。




いつもがらがらの中学校の図書館はテスト前ですらほとんど人はいない。



窓際の一番端は2人の特等席。



授業が終わると土手に座れない雨の日は、どちらからともなく図書館で待ち合わせ。




テスト勉強といえど結局お喋りに変わってしまう2人だが、花実がそんな話を出すもんだから、何となく気まずい。



つい半年前まで小学生だった優には難しい話題だった。



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