初恋



「ねえ。これ、あたしたちみたいじゃない?」



「何それ。古文?」



「島崎藤村の詩なんだけど。今国語でやってんの」



「島崎藤村読んだことないや」



言って優が少しだけ机に乗り出し、花実の前に広げている教科書を覗き込む。




気づかれないよう、それに花実も少しだけ近づいた。


トクンと、一つだけ心臓がなった。


「初恋…?まだあげそめし前髪の 林檎のもとに見えしとき…」



その続きは黙って目で追ってみるが、まだ習いもしない古文に理解が追いつかない。



花実は小さな声で、ゆっくりと言葉を並べる。




< 27 / 47 >

この作品をシェア

pagetop