初恋
「ねえ。これ、あたしたちみたいじゃない?」
「何それ。古文?」
「島崎藤村の詩なんだけど。今国語でやってんの」
「島崎藤村読んだことないや」
言って優が少しだけ机に乗り出し、花実の前に広げている教科書を覗き込む。
気づかれないよう、それに花実も少しだけ近づいた。
トクンと、一つだけ心臓がなった。
「初恋…?まだあげそめし前髪の 林檎のもとに見えしとき…」
その続きは黙って目で追ってみるが、まだ習いもしない古文に理解が追いつかない。
花実は小さな声で、ゆっくりと言葉を並べる。