初恋
「まだ大人になりきれていない、そんな男女が初めて恋をするの。2人はりんご畑に通うんだけど、通いすぎて2人が踏んだ跡が道になってて……あたしたちの土手もそうなってるよね」
にっこりとした笑顔を向ける花実の顔がなんだかいつもより赤みがかってる気がして、思わず目を逸らした。
「…………そうだっけ?」
「でもね、これ、最後に一節加えるだけで、初々しい幸せな初恋の話が突然失恋に変わるの」
「どういうこと?」
「歩いた道を戻る時
振り返りつつまた明日
そう交し合う約束も
二度と守れぬ我となる」
これまで優をからかおうと意地悪だった花実の顔が、突然悲しい顔に変わった。
「お互い愛し合っているのに、不可抗力で離れ離れになってしまう。毎日の約束ももう守れなくなってしまう。もう、2人は会えなくなってしまうの」
「なんで…」
「なんで付け加えるの?」そう聞こうとしたが、花実は言葉を被せた。