初恋
「花実も同じでしょ」
正直自信はなかった。
いつもひとつ先をいく花実の背中をただ見ているのが悔しかった。
たまには自分のことで焦ったり戸惑ったりして欲しい。
雨の音だけが響く図書室で、少しずつ2人の顔が近づいた。
そして、どちらからともなく、唇を重ねてみた。
恋愛小説はいくつも読んできた。
それが全て空想の世界ということはわかっている。
でも、2人の恋愛の知識は、本の中だけ。
ーーこれで、良いのかな?
雨音とは違う、水滴が一粒落ちる音。
目を開けると、顔を真っ赤にした花実が涙を流していた。
「……なんで泣くの?」