初恋
そうだ…借りたままの本がある…
突然冷静に降ってきた思考に、優は震える声を絞り出した。
「い、いつなの?引越し」
「明日じゃなかったかな?何、優知らなかったの?」
母は続けて
「花実ちゃんも言いづらかったのかな?あんまり仲良いと逆に言えないものなのかねえ」
と呟くが、優が返事をしないせいで全て独り言に変わる。
「ちょっと…出てくる…」
正気のない声に、母も何も言わずその背中を見送るだけだった。