初恋



「……そんなの、全然あげたのに…」



手渡す本に目線を落とし、ゆっくりとそれを受け取る。



「優に借りてる本、返すの明日でいい?」



「それこそ、あげるよ…」



「ううん。ちゃんと返すよ。だから………」



花実が作った違和感のある''間''に、ここでようやくお互い目が合った。



「だから…明日、10時にまた来て欲しい…」



思わず大きく息を吸い込んだ。



また、会う約束が出来た。



今の優は明日の約束にすがりつくしかなかった。



「うん…分かった。約束ね」



それだけ言うと、扉はゆっくりと閉まってしまった。



< 37 / 47 >

この作品をシェア

pagetop