初恋
「……そんなの、全然あげたのに…」
手渡す本に目線を落とし、ゆっくりとそれを受け取る。
「優に借りてる本、返すの明日でいい?」
「それこそ、あげるよ…」
「ううん。ちゃんと返すよ。だから………」
花実が作った違和感のある''間''に、ここでようやくお互い目が合った。
「だから…明日、10時にまた来て欲しい…」
思わず大きく息を吸い込んだ。
また、会う約束が出来た。
今の優は明日の約束にすがりつくしかなかった。
「うん…分かった。約束ね」
それだけ言うと、扉はゆっくりと閉まってしまった。