初恋
これを受け取ってしまったら、花実との本の貸し借りは終わってしまう。
花実に会う理由がなくなってしまう。
花実との繋がりが、なくなってしまう。
なかなか受け取らない優に、花実は何かを察し、渡そうと前に出していた手をおろした。
「引越し…隠しててごめんね」
「お母さんの再婚でね、東京に行くことになったんだ」
「……………ん」
「いっぱい仲良くしてくれて、ありがとうね」
「………うん」
「図書室で1人でお弁当食べてても、もう私行けないから」
「……うん」
「ちゃんと友達作るんだよ」
「……うん」
「テスト前はちゃんと勉強すること。本ばっかり読んじゃダメだよ」
「…うん」
「手紙、書くから」
瞬間、これまで相づちを打つことしか出来なかった優が、勢いよく顔をあげた。