初恋



これを受け取ってしまったら、花実との本の貸し借りは終わってしまう。



花実に会う理由がなくなってしまう。



花実との繋がりが、なくなってしまう。



なかなか受け取らない優に、花実は何かを察し、渡そうと前に出していた手をおろした。



「引越し…隠しててごめんね」





「お母さんの再婚でね、東京に行くことになったんだ」


「……………ん」




「いっぱい仲良くしてくれて、ありがとうね」


「………うん」




「図書室で1人でお弁当食べてても、もう私行けないから」


「……うん」




「ちゃんと友達作るんだよ」


「……うん」




「テスト前はちゃんと勉強すること。本ばっかり読んじゃダメだよ」


「…うん」




「手紙、書くから」



瞬間、これまで相づちを打つことしか出来なかった優が、勢いよく顔をあげた。



< 40 / 47 >

この作品をシェア

pagetop