初恋
まだ抜かせなかった身長。
今はきっと同じくらい。
前を見れば目線が同じ高さで交わった。
「やっとこっち見た」
ふふっと笑う花実が昨日より少し大人びて見えた。
「…手紙、書くの?」
「書くよ。だって、この本の感想、言えてないでしょう?」
言って、下ろしていた手をまた本と一緒に前に突き出した。
ーーあぁ、本当に行ってしまうんだね。
涙を飲み込み、それをゆっくりと受け取った。
「ありがとう」
花実の笑顔が痛いほど胸に刺さった。
「花実、そろそろ行こうか」
タイミングを見計らっていたのか、花実の母が大きなカバンを持って玄関から出てくる。