初恋
パラパラと適当にページをめくる。
が、何かの弊害によって、それはあるページで止まった。
「しおり…」
本に挟んであったのは見覚えのないしおり。
よくある、ラミネート加工されていて、赤いリボンの付いた、空色のしおりだった。
「何…これ…」
そこにはしおりが挟まっているだけではなく、見たことのある字が書かれた付箋が貼ってあった。
【ここを読むこと】
「花実の字…」
そのページは、都会に住む主人公が不本意で田舎に引越しをして、毎日泣いているところ、田舎の少女が元気づけるために、少女のお気に入りの丘に連れ出したシーン。
夜空は満天の星空。
「こんなの、あなたの住んでた街では見られなかったでしょう?」
両腕を広げ、あたかも自分の物のように空を見せる少女に、主人公は「月が綺麗ですね」と初めて笑顔を見せた。