初恋
優の心臓はドクンと一つ、大きく鳴った。
「I love you…」
いつか夏目漱石がI love youを「月が綺麗ですね」と訳したのを知っている。
いつも自分に自信がない。
自分の気持ちにも、花実の気持ちにも、確信はあったけど、自信はなかった。
引き寄せられるように他のページも確認すると、付箋はいくつか貼ってあった。
【毎日楽しかったね】
【優のせいで友達が出来なかったよ】
【私がいなくてもしっかりするんだよ】
【本を読むの、やめちゃダメだよ】
【手紙、書いてよね。東京都杉並区ーーーー】
花実の可愛らしい、丁寧な字が並ぶ。
「なんだよ…手紙書くの、俺じゃんか…」
そう呟く優の持つ空色のしおりの裏には【ありがとう】の文字があった。