初恋
クラスの女の子ともほとんど話をしない優は、「どうぞ」も何も言えず、マフラーを手渡した。
もちろん気になる涙の訳も聞けずに、その子との会話はこれで終わりだと思っていた。
しかし、少女は優が持っている本に目をつけた。
「あ、星新一!きみ、本好きなの?」
「・・・・・・うん。図書館の帰り」
そう言う優の言葉には、「きみもさっき図書館に来てたよね?」という意味も含んでいた。
「あそこの図書館?」
後ろに見える大きな図書館に目をやり、しかめっ面で首をかしげた。
「そう」
「あの図書館、大きいよね。私はもっと小さな図書館でよかったのに」
それだけで優はその子が言いたいことを察することができた。
「遠くから来たの?」
「うん。前住んでた近くには、お気に入りの図書館があったんだ。小さいけれど、とてもあたたかくて、司書さんも私のことよく知っているから、私に合った本を選んでくれたりして……貸し出しカードは手書きでね、裏に日付と自分の名前を書くの。今じゃもう何でもパソコンでしょ?」
よく喋る人だ。
第一印象からかなりかけ離れた少女が、そこにはいた。