初恋
でも、話を聞くのは嫌いじゃなかった。
「それで・・・泣いてたの?」
「・・・・見てたの?」
気の強そうな女の子が顔を赤くする瞬間を初めて見た。
「でも、あそこもいいところだよ。確かに借りる時はお店みたいにピッてするけど。静かで、落ち着いてて・・・・」
「図書館なんてどこもそんなもんよ」
ふいっと顔を土手の方へ向ける。
さっきまで遊んでいた親子はもういない。
「でも・・・きっと、好きになると思う」
優は小さな小さな声で言った。
「気が向いたら、行く。本は好きだから。でも、まだ行かない。まだ、行きたくない。前の図書館を忘れたくないから・・・」
悲しそうな表情で言う少女から感じる、大きな特別。
口下手で、人と関わるよりずっと本を読んできた優。
「じゃあ、行きたくなるまで僕が本を貸してあげるよ」
自分でもびっくりする台詞が出た。