【完】真昼の太陽
艶やかな長い黒髪。
大きな二重の瞳に赤く熟れた唇。
色白の肌によく映えていて。
美しいと思った。
一目惚れだった。
咄嗟に助けた彼女は。
まるで死んだようだった。
一瞬人形なのではないかと疑ってしまうくらい。
生気を失っていた。
育ち盛りの女性にしては華奢すぎる身体。
抱き上げた時、服越しから感じたのは。
肉付きのあるものではなく骨の感触だった。
顔色も良くなかったし、目の下のクマが目立った。
なにより。
光の無い瞳が。
俺の心を揺さぶった。
何もかも諦めたような態度。
上を向くことのない冷めきった瞳。
それでいて人を突き放すような言葉。
歩み寄ろうとすれば酷く怯えて。
自分が震えていることにさえ気づかない。
脆くて、弱い、少女。
生い立ちになにかあるのか。
暗い闇を抱えた少女が頭から離れなかった。
あのままじゃそう遠くない未来。
壊れてしまう。
そうなる前に、あの場所から救ってあげなければいけない。
好きなやつをそう簡単に手放してやるつもりはない。
俺に惚れられたのが運のつき。
死ぬまで離してやらない。
それが、俺の愛し方だ。