【完】真昼の太陽
……東の繁華街がいちばん治安が悪いと思っていたけど。
西の方が断然悪いかも。
ガラが悪いっていうか。変な匂いがする。
シンナーに近いような。
とりあえず、気分が悪くなる匂い。
床に倒れこんでいる人もいるし。
路地裏からは女性の嬌声が聞こえてくる。
東って整備されてたんだ。
なんか少し、怖くなってきたかも。
「あんた女子高生?うちの店で働かない?」
足を踏み入れて1分もたたないうちに声をかけられた。
名刺を見ればどこかの風俗店のもので。
腰にまわされた手がひどく気持ち悪かった。
無視して歩こうにも力が強くて振りほどけない。
“女は力で男に勝てない”
あいつの言葉が今になって思い出された。
そんなわけない。
自分の身くらい自分で守れる。
「離せ!」
無理やり振りほどくように身体を動かす。
それでも力は強くて。
動けば動くほど、もっと込められる力は強くなっていった。
「うるせえな、いいからこっち来い。」