【完】真昼の太陽
「この匂い……。」
何かを思ったのか。
美しい男の人は私の首元にそっと顔を寄せた。
いきなりの事に驚いて顔が赤くなってしまう。
な、なに……。
「君、東の人間かい?」
「え?」
「真夜の匂いがする。」
「真夜の匂い……って。」
「真夜の匂いは独特なんだ。特注の香水をつけているからね、嗅ぐだけで分かる。君からその匂いがするって言うことは、真夜の女か?」
制服は洗ってないから。
助けられた日にはおらされた上着の残り香がするのかもしれない。
最近追いかけ回されているから。
その時に匂いが移ったのかもしれない。
それでも何も知らない私にも。
今の状態が良くないってことくらいは分かる。
御影と関係があるという疑いがかかると。
美しい男の人の目つきが途端に鋭くなった。
東の人間。
そう言ったということは、この人は西の人間なんだろうか。
察するに、東と西の関係はあまりよくはなさそうだけど。