それでも好きだから。
話題にしていた相手が来るなんて思ってもみなかった。

タイミングがいいのか、悪いのか……


「何話してたの?」

「秘密ですよ! ね? 華恋?」

「え、うん」

「えー、気になるなぁ」


先生は私の前の席に座って、下を向いている私の顔を覗き込んだ。


「ねぇ、葉山」

「は、はい!」

「今だから聞くけど、どうして俺のこと避けてたの?」

「え…」


バレてたんだ……
嫌いだから避けていたわけではない。
むしろ、好きだからこそ自然と避けてしまっていた。


「華恋…」


りりあが心配そうに私の名前を呼ぶ。

本当のことを言ったほうがいいの?
でも今言ったら、先生は……


「言えないならいいけど。あれ、地味に傷ついてたんだよ」


違う! 誤解です、先生!


「俺、葉山に何かしたかなぁってずっと悩んでた」


先生、待って! 行かないで!


「気づかないうちに葉山に何かしてたなら、ごめんね。暗くならないうちに早く帰れよ」


そんな悲しそうな顔、最後に見たくなかった。

私、知らないうちに先生を傷つけてたんだ。


「りりあ、私はどうしたらいいの?」

「今からでも遅くないよ。走ればまだ間に合うから!」


りりあはそう言って私を立ち上がらせると、軽く背中を押した。

誤解されたまま、卒業式を迎えたくない。


先生、見つけた!


「遠山せ……」


あれは、植村先生?


私は咄嗟に角に隠れて、2人の様子を伺った。


「遠山先生、私たちのこと生徒には言ったんですか?」

「卒業式の日に言おうかなって」

「言わなくてもいいんじゃないですか?」

「本来は言わなくてもいいことだけど、気づいてる生徒もいただろうし…」


“私たちのこと”?

2人は、付き合ってたの?

生徒に言うって、もしかして……結婚?


幸せそうに笑う2人はとてもお似合いだった。

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