吸血鬼ってゆーな!
1滴 セミは偉大
真夏の出来事は一つ一つ頭の中で熱を帯びたようにこびりつく。
セミの鳴き声に舌打ちしながら親に頼まれた買い物を手際よくこなしてはカゴに商品を入れる。
クーラーの効いたスーパーではついつい用もないのに長居してしまう。
ついでに、要らないものも買ってしまう。
「合計8639円になりまーす」
「しばかれる」
3000円以内と渡された紙切れは自分の財布に入れ、福沢諭吉の印刷された一万円札を渡した。
カゴを持ち上げたときに後悔するのは昨日今日と始まったことではない。
ため息をつく気力もなくてもくもくと俺は袋に買ったばかりの食品やらアイスを詰めた。
こんな大荷物持って家まで15分の道のりを考えると夏が嫌いだと改めて認識するような気がして思わず眉間にシワがよった。
嬉しいのは夏休み中の餓鬼だけだろ。
「…アイス、溶けちまうな」
「あんた!まーたこんなに食べないのにお菓子買ってきて!」
「オマケがメイン」
「ダブってんじゃないか!」
「母さんの前世はセミか」
お出迎えをしてくれたわりには風当たりが強く持っていた荷物を引ったくられてしまう。
セミのようにうるさい自分の母親に本音が出てしまった。
頭にげんこつをもらってじんじんと来る痛みに錯覚して頭の中でもセミが鳴いてるようで不愉快になった。