天使は金の瞳で毒を盛る
「あなたのその甘さはよくわかっているのに、この結果だから自己嫌悪なんでしょう」

「だとして、それって私が怒られるならまだしも。実際、あなた、朝は怒ってなかった?嫌だったけど、ここで落ち込まれるよりましじゃない?」

「あれは、半分八つ当たりです、すみません」

「え、じゃあ、さっきまでのご褒美がどうのってのは…」

「それは、だから、面白かったから」

…わからん。彼のメンタルがさっぱりわからない。

「…ここって、私、怒ってもいいところ?」

榛瑠はちょっと笑うと言った。

「あとは、まあ、少しばかり慰めて欲しかったんです。多分ね」

その言葉を聞いて、自分の顔が赤くなるのがわかった。

私が恥ずかしがる事じゃないけど。でも、榛瑠が!?私に?彼に何が起きてるのよ。

「仕事は挽回のチャンスってあるものです。なくったってなんて事はない。でも、あなたに何かあったらそうはいかないでしょう?実際運が良かったんです。サトの店が近くて、すぐに行ってもらえたから。でなければどこかに連れ込まれてました。そうなっても間に合ったとは思いますが、そんな危ない橋渡った時点で失敗ですから」

榛瑠が淡々と言う。

「私のこと大事にしてくれて嬉しいけど…」

でも、そこまで気にしなくても。結果、大事に至らなかったのだし。ビジネス上の結構なトラブルでも動じないのにな。

「あなたは自分のことを低く見積もりすぎです」

「…いや、うん、自分に商品価値がある事はわかってるつもりだけどね」

舘野内家の一人娘だもん。

「馬鹿か、あなたは」

はい?

「なによ、いきなり!」

「そこじゃないだろう、誰が商品の話をしている」

びっくりした。声が怖かった。榛瑠は眉間に皺を寄せている。今日はなんだか知らない顔をたくさん見るなあ。

そんな事考えながらちょっと泣けてきた。なんでこの人、こんなに何でもできるくせに、私のことでこんなに怒ったりましてや落ち込んだりしてくれるんだろう。
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